もしも・・・(中編)



作者
「いかがかな?たった一言。発言したか、しなかったか。それだけで運命とは容易く変化するのだよ。
今回の場合、あの者・・輝月は自ら発した言葉で自分を励ましそのプライドを捨てキュピルに心の助けを求めた。
諸君達の言う『本編』ではキュピルは話し途中で無理やり窓を閉め、そのまま翌日を迎えるが
輝月が自分の事を心配してくれていると分った途端にこうなってしまった。
輝月はキュピルに対して全てを許すようになり、またキュピルも輝月に対し心を開くようになる。
この世界線をそのまま辿ってゆけばどうなるか。・・・クク、わかるかな?

キュピルと輝月が結ばれず、そのまま物語・・・本編を辿って行くとトラバチェスとオルランヌは全面戦争を起こし
キュピル等は死闘を繰り広げ最後にルイの作りだした狂気の渦にキュピルは飛びこむ。
では、キュピルと輝月が結ばれる世界線はどうだ?

・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

ふむ。私もこの世界線は初めてみるが本編と比べ親密な仲になったという事以外は特に変わりがないな。
・・・!
・・・クク、いや・・・どうやら輝月とキュピルは大きな決心をしたようだ・・・。
今、物語はルイが作った渦に飛び込む直前まで来ている。」











キュピル
「・・・・ズバリと言っていいか?」
琶月
「ダメです」
キュピル
「輝月の事が好きなのか」
琶月
「っ〜〜〜〜!!!!」

琶月が刀を抜刀しようとしたので慌てて逃げた。

キュピル
「ホモの次はレズか!」
琶月
「え?どういうことですか?」
キュピル
「やべ、何でもない!」

キュピルが崖から飛び降り触手を使って綺麗に着地しそのまま何処かに逃げてしまった。
今になってうちのクエストショップのメンバーは全員とんでもない奴だったと改めて認識した。


キュピル
「(だからあんなに酷い扱い受けても全然平気で居られたのか・・・納得・・・・)」

複雑な気持ちで居ながら再び拠点の周りをグルグルと歩き始めた。

・・・・。

・・・・・・・・・・。




その時輝月が角から現れた。

キュピル
「おや、輝月か。何をしているんだ?」
輝月
「ん、キュピルか。そういうお主こそ、そこで何をしているんだ?」
キュピル
「ただの散歩だ。」

琶月の一件を思い出した。

キュピル
「そうだ、輝月。琶月が山岳の上に今いるぞ。登って少し話してきたらどうだ?」
輝月
「ほぉ、何故じゃ?」
キュピル
「ああ見えて意外と臆病だ。慰めてやってくれ」
輝月
「そうか。では行ってくる」

輝月が山岳へ向けて歩き始めた。
・・・頑張れ琶月。お前もテルミットも茨の道を突き進んでるな・・・。

再び拠点の周りをぐるぐる歩くことにした。





作者
「これは諸君達が言う『本編』だ。では輝月とキュピルが結ばれる世界線ではどうなるか?
その続きは諸君達に見届けて貰おう・・・。
おぉ、そうだ。私から諸君に一つだけプレゼントしよう。
違う世界線とは言え本筋は同じだ。今から私が変わった魔法を諸君にかける。
諸君の言う『本編』と今諸君達が見ている『世界線』で同じ会話が起きる事もある。
同じ会話は青色の文字にしておこう。・・・クク、礼は必要ないぞ?私の楽しみを知ってもらえればそれで十分なのだからな・・・。」











その時輝月が角から現れた。

キュピル
「おや、輝月か。何をしているんだ?」
輝月
「ん、キュピルか。そういうお主こそ、そこで何をしているんだ?」
キュピル
「ただの散歩だ。」

琶月の一件を思い出した。

キュピル
「そうだ、輝月。琶月が山岳の上に今いるぞ。登って少し話してきたらどうだ?」
輝月
「ほぉ、何故じゃ?」
キュピル
「ああ見えて意外と臆病だ。慰めてやってくれ」

輝月
「・・・いや、ワシはお主と会話したい。」
キュピル
「・・・本当に琶月と会話しなくていいのか?」
輝月
「ふっ、琶月とはもう腐るほど会話した。じゃがお主と出会ってからまだ数カ月しか経っておらぬ。」
キュピル
「(琶月がちょっと可哀相だ・・・)」
輝月
「・・・お主はやり残した事はないのか?」
キュピル
「やり残した事?例えあったとしても死ぬつもりは毛頭ない。だから今やる必要もない。」
輝月
「・・・お主らしいのぉ。」
キュピル
「逆に聞いてみるが、輝月は何かやり残したことはあるのか?」
輝月
「・・・あるが言わぬぞ。」
キュピル
「秘密にしたがるやり残しってどうかと思うが・・・。」
輝月
「ぬ、ぬぅ・・。お主がどうしても言うのなら言わんでm・・・。」

その時魔法のメッセージが届いた。
ギーンからだ。


ギーン
『キュピル。あの黒い渦について色々分かったぞ。なるべく早めに拠点に戻ってきてくれ』


キュピル
「・・・ギーンに呼ばれた。行ってくる」

輝月
「ぬ、ワシも行くぞ。」


キュピルと輝月が拠点へと入る






ギーン
「思ったよりすぐ来たな。
・・・む、輝月もこの場にきたか・・・。」
輝月
「聞く権利はあろう?」
ギーン
「・・・好きにしろ。」
キュピル
「・・・それであの黒い渦は?」
ギーン
「・・・あの黒い渦の中心に生命反応を感知した。・・・強さ、形状からしてルイで間違いない。」
キュピル
「・・・あの黒い渦の中心に・・・」

キュピルが改めて黒い渦を眺める。
・・・・渦が回り風を巻き起こしている・・・・。

輝月
「・・・見れば見る程禍々しい渦じゃ・・・。その中心にルイがおるというのか・・・。」
ギーン
「中は空洞になっていてそこにルイがいる。・・・だが空洞になっていない部分は何があるか分らない。
様々な分析をかけた結果強いマナ反応も感じられた。もしかすると独自の世界があるかもしれない」
キュピル
「・・・独自の世界・・・」
ギーン
「・・・そして驚くべき事が分かった。そのマナ反応なんだが・・・。古の魔力が流れている」
キュピル
「・・・・!古の魔力だって!?」
ギーン
「そのマナを上手く外に引き出す事が出来れば・・・。・・・俺達の計画はついに実現する。」
キュピル
「・・・どうすればいい」
ギーン
「あの黒い渦を消せば自然とマナが外に漏れるはずだ。・・・そうすれば普通に使える。
・・・問題はあの黒い渦をどうやって消すか・・・だが。その事についてはファンが全て分析してくれた」

ちょうどファンが拠点の城門前にやってきた。

ファン
「キュピルさん。・・・分析が終わりました。あの黒い渦を消す方法も分かりましたよ」
キュピル
「流石。一体どうやって調べてるのか全く分からないが頼りになる。それで、どうすればいいんだ?」
ファン
「・・・誰かがあの黒い渦に真上から飛び込み、ルイさんを倒す、あるいはルイさんの狂気化を解除する事で
あの黒い泥は全て消えてなくなる事が分りました。どうやら様々な物質を取り込みそれを
媒体にして作りだしているようなのでルイさん本人が力を失えば自然と消えて行くようです。」

輝月
「じゃからあの時、泥から触手が伸び戦車などを取りこんでいったのか。
しかし大地、空へも伸び侵食していく泥はまるで世界の終焉を表しているようじゃな・・・。」
キュピル
「世界はまだ終わらない。ルイさえ何とか・・何とかあの渦から助け出してしまえば消えるんだろ・・・!?」
輝月
「さも助け出せる気でおるな。」
キュピル
「当たり前だ。そのためにこの薬を作ってもらったんだ。」

キュピルが一錠の薬を握りしめる。
・・・・狂気化を治す唯一の薬・・・。
これさえ飲ませる事が出来ればきっと・・・。

ファン
「・・・・・・。ですがキュピルさん。・・・・一つ。問題があります」
キュピル
「問題?」
ファン
「既にギーンさんから聞いたと思いますがあの黒い渦の中にはルイさんが作りだした
独特の世界が存在しているようです。その世界にルイさんは居ます。
・・・・正直な所を申しますと仮にルイさんを無力化させて黒い渦を消したとしても・・・。
生きて帰れる保証がありません。そのまま独特の世界に永遠に閉じ込められる可能性が非常に高いです
キュピル
「・・・・」
ギーン
「・・・・100%閉じ込められる訳ではない。・・・だが別の次元に繋がっていた場合。
脱出は困難を極める。・・・下手すればそのまま餓死で死ぬかもしれない」
キュピル
「つまり・・・あの黒い渦を消すには誰かが犠牲にならなければいけないってことか」
ファン
「・・・・・・・」
ギーン
「・・・・・・・」

輝月
「・・・・・・・。」

的を射た発言に3人とも黙ってしまう。
・・・琶月のシナリオ通りになってしまった。

キュピル
「・・・当然だと思うが誰が行くかは・・決まっていないんだよな?」
ファン
「決まっていません。今判明したばっかりなので。・・・立候補者を集めますか?」
キュピル
「集めた所で絶対に誰も手を上げない」
ギーン
「・・・仮に居たとしても余程の実力の持ち主でなければ狂気化したルイを無力化させるのは難しい。
対象はかなり限られる。」

輝月
「・・・・・・。」

輝月がキュピルの事をしきりに見ている。
・・・ギーンがその事に気付く。

ギーン
「(・・・あいつももう察しているようだな)」
キュピル
「ギーン。今すぐヘリを用意してくれ。俺が行く」

輝月
「っ・・・!!」

輝月がキュピルにバッと振り返る。

輝月
「お主・・・また自分を犠牲にする気じゃな・・・!!」
キュピル
「事態は一刻を争うんだ。・・・第一、あの渦だって・・・。
あの時・・・俺がルイを蝶の木の不意打ちに気付いていれば・・・!!」
輝月
「お主が行くと言うのならばワシも行くぞ!」
キュピル
「輝月。」
ギーン
「・・・キュピル、お前がそう言う事は予測していた。・・・そう思ってもう全て準備は済ませてある。
・・・どうせ最後は魔道石だろうからな?

だが輝月。お前は・・・難しいな。」
輝月
「何じゃ、その魔道石というのは。」
ファン
「ギーンさん・・!?魔道石って・・・一体?」


突然出てきた単語にファンが質問してくる。

キュピル
「ファンは覚えてると思うが俺はこの世界の住民じゃないのは知ってるよな?」
ファン
「はい。」

輝月
「・・・っ?」
キュピル
「・・・実は前の世界の人達から一通の手紙が届いてな。何回か連絡を取り合って・・・
元の世界に戻る方法を見つけたんだ。」
ファン
「・・・元の世界に戻る方法・・ですか」
キュピル
「そうだ。・・・この魔道石に祈りを捧げると俺は元の世界に帰る事が出来る。
・・・・ただし、二度とこっちには戻れなくなるが・・・」
ファン
「・・・・キュピルさん。一応念のため言っておきますが・・・その魔道石が黒い渦の中で
発動するかどうかも怪しいですよ。・・あってもなくても変わりません。」
キュピル
「ファン。・・・大丈夫だ。100%閉じ込められる訳じゃないんだろ?それに今の俺は狂気化している。
普通の人と比べれば遥かに強い。・・・ルイを絶対に止めて見せる。」

輝月
「・・・よくわからぬがあの渦の中から脱出する方法があるという事じゃな?」
キュピル
「そう考えても差し支えない。」
輝月
「ならばワシも行っても問題なかろう?」
キュピル
「問題ないって・・・・。」
輝月
「ワシもその魔道石とやらの魔力にお主と一緒に包まれ脱出すればよかろう?」
キュピル
「いいか。この魔道石の魔力に乗って進む先は異世界だ。
輝月の知っているような世界はなく、そこには道場も琶月も何もかもない。
それこそ輝月・・・お前が一番怖がっていた孤独が待っているんだぞ。」
輝月
「何を寝ぼけた事を・・・。ワシの孤独はお主・・キュピルが紛らわしてくれてるのじゃぞ。
異世界へ飛ばされようが死のうが地獄へ行こうがお主さえいればワシ・・・いや、私は構わぬ。」
キュピル
「輝月・・・・。しかし・・・・。」

ギーンが右ひじでファンを突く。

ギーン
「(おい!こいつとキュピルはこんなにも仲よかったのか?)」
ファン
「(僕も初めて知りました。あの輝月さんがこんなにも誰かに依存しているのは初めてみます)」

少し間を置いてから再びキュピルが喋った。

キュピル
「・・・さっきも言った通り俺は狂気化しているんだ。このまま時が経てば俺はきっと第二の黒い渦を
作りあげてしまうだろう。・・・化け物になる前にルイの狂気化を治療し・・。最後に俺が死ねば全て解決する。
・・・魔道石を使わないでルイを助けたらそのまま死んだ方が・・・世界のためになるだろうな・・・。

だから輝月。俺と一緒に来ると言う事は即ち一緒に死ぬって事になるかもしれないんだぞ。」
輝月
「じゃからワシも言ったぞ。お主とならば死のうが地獄へ行こうが構わぬとな。」
キュピル
「・・・・・くっ・・・・!」

キュピルが歯を食いしばる。

輝月
「ふっ、別にそこまで邪険に扱わなくてもよかろう?私はお主のお陰でここまで強くなれたのだ。
お主には感謝しきれぬほど感謝しておる。」
キュピル
「・・・・・・・・。」
輝月
「・・・まだ許さぬと言うのか!ならばキュピル!お主が私を連れて行かぬと言うのならば
ワシはここで死ぬぞ!」

そういうと輝月が刀を抜刀し自分の首筋に当てる。

ファン
「輝月さん、落ちついてください!!!」
ギーン
「クソが!!一体何をやっている!!!」

ギーンが杖を構え魔法を放とうとした瞬間、キュピルが手を上げた。

キュピル
「・・・・本当にいいんだな・・・?輝月・・・。」
輝月
「くどい。」
キュピル
「・・・・わかった。・・・輝月。一緒に来てくれ。」
輝月
「ふっ、足手まといにならぬよう懸命について行こう。」

そして輝月がキュピルの体から生えている触手を少し弄りながらキュピルの耳元で囁いた。

輝月
「(全てを解決したら異世界とやらに行くのじゃろう?お主との二人生活。楽しみにしておるぞ。)」
キュピル
「(・・・・全て解決したら・・・な・・・・。だが本当に解決するのか・・・?
このまま放置すれば・・・・俺は間違いなくルイと同じ運命を辿る。・・・異世界・・俺の故郷でこんな黒い渦を出す訳には・・・。)」
輝月
「(その時まで生きるのも一つの手だとは思わぬか?)」


「俺も行くぞ」

4人とも声の聞こえた方に振りかえる。
・・・エユが立っていた。


エユ
「あの化け物は・・・俺達オルランヌが作りだした物だ。後始末も全て俺達オルランヌがやらねばならない。
キュピル、俺も行くぞ」
キュピル
「エユ、犠牲になるのは俺
と輝月だけでいい。それにお前まで死んだらジェスターはどうするんだ。」
エユ
「・・・俺はもう生きて行くのが耐えられないんだ・・・。あんな化け物を使って世界を平和に導こうとした俺に
この世界で生きて行く資格はない・・・。・・・罪滅ぼしをしたい。」
キュピル
「正気になれ、エユ。・・・確かにお前はとんでもない事をしようとしたがお前まで死んだら
一番誰が悲しむのはジェスターだぞ!俺も死にお前も死んだらジェスターは正真正銘、孤児になる!
お前の子供同然のジェスターを残して死ぬきか!」

その時ジェスターの声が聞こえた。
・・・泣いている。

ジェスター
「キュピル!エユ!行かないで!」

ジェスターが声を押し殺して泣いている。
・・・全部聞いていたらしい。

ジェスター
「・・・エユもキュピルも・・・
輝月も皆も居なくなるのは嫌・・・。ファン・・!何とかならないの・・!?」
ファン
「・・・・・・。最終的に二人が入らなくてもルイさんを止める事が出来ればあの黒い渦は消えます」
ジェスター
「じゃぁ、遠隔操作とか何かでやればいいじゃん!!キュピルとエユが行くことないよ!!」
ギーン
「・・・あの黒い渦の中には違う次元の世界が作られている。・・・次元を超えてまで遠隔操作はできない。」
ジェスター
「じゃぁ・・!じゃぁ・・・。・・・・うっ・・・。
・・・皆が行くなら・・私も行く・・・!

エユがジェスターを慰めに行く。

キュピル
「・・・エユ、とりあえずジェスターを落ちつかせてやってくれ。それまで俺は待ってるから」
エユ
「・・・わかった」

エユとジェスターが部屋に入った。

キュピル
「・・・ギーン。今すぐヘリに乗って黒い渦に飛び込む。ジェスターが戻る前に。

輝月・・・準備を済ませる時間はない。」
輝月
「ワシは刀一本さえあればよい。」
ファン
「キュピルさん」
キュピル
「ファン。・・・後の事は全て頼んだ。俺がしてやれることはこれで最後だ」

ギーンが魔法を唱え整備士と連絡を取り合っている。

ファン
「・・・キュピルさん。僕はキュピルさんの事を尊敬しています。
いつかキュピルさんみたいに人を従える偉大な人物になりたいっと何時も思っていました。」
キュピル
「俺は偉大な人物じゃない。普通の人間だ。」

ファン
「・・・そして輝月さん。まさかキュピルさんとそこまで親しい仲だとは思ってもいませんでした。」
輝月
「別によかろう?」
ファン
「・・・もしも。異世界へ共に行く事が出来たらその時は・・・。キュピルさんの事をよろしくお願いします。
既に熟知していると思いますがキュピルさんは人のためなら自分を犠牲にしてでも助けようとします。
・・・いつもキュピルさんの傍にいてあげてください。」

輝月が「ふっ」と笑う。

ギーン
「ヘリを裏に用意したぞ。・・・・・・・」

ギーンが大きなため息をつく。
・・・・無言で一粒だけ涙を流す。

ギーン
「ったく、俺も情脆くなったな。・・・お前は俺の最高の友だった。第一印象こそは最悪だったがな。」

アノマラド魔法大立学校での出来事が思い返される。・・・新聞に書かれていた政治をネタに交流を深めて行ったのを
思いだした。考えてみればギーンはあの頃から政治に関わろうとしていたのだろうか・・・
ギーンが手を差し伸べてきた。キュピルも手を差し伸べ握手する。
力強く握りしめ互いの健闘を称える。


キュピル
「行ってくる。アーティファクトがあの黒い渦を止められる時間は残り48時間しかない。
二日以内に何とかしなければいけない。さぁ、いこう」

「待て。」

聞きなれた声が聞こえた。

マキシミン
「おい。・・・荷物まとめておいてやったぞ」

マキシミンがドサッとキュピル
と輝月の荷物を放り投げる。


マキシミン
「勝手に話を聞いて悪かった・・っとは思っていない。むしろ感謝しろ」
キュピル
「お前最後の最後まで変わらないな。」
マキシミン
「・・・このまま見送るのもあれだな。・・最後にお前に一言言ってこの場から去るとしよう。
・・・お前は数少ない気軽に話しかけられる奴だった。・・・じゃあな」

そういってマキシミンがその場から離れた。

キュピル
「これが噂のツンデレか」
マキシミン
「うるせぇっ!!
そこの着物を着た女にでも言いやがれ!!」

マキシミンがペットボトルを投げつけてきたが避ける。今度こそ正真正銘どっかに行った。

キュピル
「・・・行こう。邪魔が入る前に」

輝月
「・・・・・。」
ギーン
「行くぞ」
ファン
「・・・」


キュピルとギーン、そして輝月が拠点の裏に回る。
・・・大型ヘリが一機スタンバイしていた。


3人ともすぐにヘリコプターに乗り離陸した。
その様子をヘルとテルミットに見られていた。


ヘル
「キュピルさん!何処に行くんですか!!

・・・・!!よくみると輝月の野郎も・・・!!!」
テルミット
「・・・・!まさか・・・!」

事情を知っていたテルミットが顔を青ざめる。

テルミット
「・・・きゅ、キュピルさん!!
輝月さん!!!」
ヘル
「な・・・なんでだよ・・・!!何で俺は連れていかないんだ・・・!!!!」

キュピルがヘルとテルミットを無言で見続ける。そのままヘリは空高く飛んで行った。




戦車兵
「隊長。一機の大型ヘリが飛んで行きますよ。・・あの触手の生えた人間
と秒速で振った女が乗ってますね」
小隊長
「次はヘリコプター操縦するか。そうすりゃ絶対もてるな。
戦車兵2
「絶対に
彼女もろとも事故る」
小隊長
「今からお前を
10回絞める」
戦車兵2
「勘弁してください」







琶月
「・・・・」

琶月が岩場によりかかっている。

琶月
「・・・あ・・・ヘリコプター。」

琶月が起き上がりヘリを凝視する。・・・触手。それが見えた瞬間目を見開き乗っている人物を確認する。。
・・・あの特徴的な触手・・・。間違いない。キュピルだ!!そしてその隣に居る人物・・・・。

琶月
「し・・・師匠・・・?・・・し、師匠!!!!!!!!!!」

そのまま黒い渦の真上に行こうとしている。

琶月
「ま・・まさか・・・!!!」

キュピルの言ったシナリオ通りに動こうとしている・・・!?


琶月
「キュ、キュピルさん・・・・!!師匠・・・・!!!
師匠ぉ・・・・・。」

・・・・分っていた。
いつのまにか。輝月がキュピルに対して気を持っていた事を。

琶月
「・・・師匠・・・。お元気で・・・・。」








操縦士
「ギーン様。・・・黒い渦の真上へやって参りました」
操縦士2
「降下準備スタンバイOKです。ここからあの渦の中心に飛び降りてください。」

ヘリコプターの扉を開ける。

キュピル
「・・・緊張している」
輝月
「・・・ワシだけじゃなくて少し安心したぞ。」
ギーン
「キュピル、
輝月。・・・・・最後に何か言いたい事はあるか?皆に伝えておくぞ」
キュピル
「まるで犯罪者が言う台詞だな。そうだなぁ・・・。」

輝月
「琶月に別れの言葉一つも言わずにすまぬと伝えてくれ。」
ギーン
「伝える。」
キュピル
「・・・・家が燃えてしまったからジェスターとファンとルイのために新しい家を建ててやってくれって言ってくれ。
ギーン、出来たら皆が立ちなおるまでカバーを頼む。じゃあな!ギーン!!」







そういってキュピルと輝月がヘリコプターから飛び降りた。












黒い渦に入る前にキュピルが顔を上げアノマラド大陸の日を目に焼き付けておく。





輝月がキュピルの手を握り締めてきた。




輝月が頷く。




キュピルも頷く。









そして意を決し、黒い渦へ視点を落とした。








キュピル
ルイ。・・・・今終わらせる・・・・。」








作者
「輝月とキュピル。この者同士、心を通い合わせた結果最終局面で物語は大きく変化する。
キュピルにとってそれは幸福か?それとも絶望か?無か?有か?
・・・・クク、心配しなくてもいい。このまま暇で終わるはずがない。
あのルイが何もしないで終わる事なぞ・・ない。」



あともう一回だけ続く


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